2014年の沖縄県知事選で、沖縄の人たちは辺野古への基地移転に反対の立場をとる翁長知事を選んだ。
これは、本土の人たちへの沖縄の人たちの意思表示だった。
沖縄県の面積は日本の国土面積のわずか 0.7% である。
そこに、面積比率で約 70% の在日米軍基地がある。
「いくら何でも、沖縄の基地負担は多すぎるじゃないか」というのが沖縄の人たちの言いたいことだ。
普天間基地の移転先が、結局また沖縄県内になるなんて、もういい加減にしてほしいと沖縄の人たちが感じるのは別に不思議でも何でもない。
今年8月翁長沖縄県知事が亡くなった。
その後、私達、特に本土にいる人たちは、自分の家族、友人、職場の同僚などと沖縄の基地の話をしただろうか?
今年9月、沖縄の人たちは翁長前知事と同様に辺野古への基地移転に反対の立場をとる新しい知事を選んだ。
その後、私達、特に本土にいる人たちは、自分の家族、友人、職場の同僚などと沖縄の基地の話をしただろうか?
本土の人たちは沖縄の人たちの考えをちゃんと聞いたことがあるのだろうか?
彼らは、普天間基地を県内に移設するのではなく
- 本土に移設する
- 日本国外に移設する
- 移設ではなく廃止にする
のいずれかにしてほしいと言っているわけである。
なにも、日米安保条約自体に反対しているわけではない。
日本全体で、負担を分け合うことを考えて欲しいと言っている。
しかし、政府は一歩も譲歩する気配はない。
辺野古が唯一の解決策と述べるだけで、はっきり理由を言わない。
翁長知事が選ばれた 2014 年の沖縄県知事選以来、国政選挙も幾度か行われた。
ごく一部を除き、表立って辺野古の問題を争点に取り上げる候補者や政党はなかった。
そして、おそらく、特に本土に住んでいる人たちは、今日に至るまでほとんど沖縄の基地のことを話題にすることはなかった。
沖縄県外に基地を移転するデメリットがないわけではない。
しかし、それは誰に対するどんなデメリットなのかということを考えるべきだと思う。
在日米軍は 2つの役割を持っている。
アメリカの国際的軍事戦略上の役割と日本の防衛に関する役割だ。
ここではその中身については書かないが、沖縄県外に基地移転をすることにより、どちらにもそれなりのデメリットがあるだろう。
それは沖縄県の人たちだってわかっている。
しかし、これは誰に対するデメリットなのだろう。
在日米軍によってもたらされる安全保障上の恩恵というものがあるとすれば、ほとんどは沖縄に対してのものではなく、圧倒的に本土に対してのものである。
つまり、辺野古に新基地を作らないことによるデメリットがあるとすればそれは本土が負う。
沖縄県民の負う負担と本土の人たちが負うそのデメリットをてんびんにかけた時、本土の人たちはどのような判断をするのだろうか。
辺野古に基地を作るべきだと言うだろうか?
翁長元知事や玉城知事を選んだ沖縄の人たちは、そういうデメリットがあるということも理解した上で、譲って欲しいと言い続けてきた。
これまで何度も、本土の人たちへ向けて公平な基地負担を考えて欲しいというメッセージを投げてきた。
本土の人たちに聞く耳はあるだろうか?
本土の人たちは自分の事として基地の話をするようになるのだろうか?
本土の人たちはいつか意思表示をするのだろうか?
この問題を「沖縄県民対日本政府」という構図に押し込め、本土の人間は高みの見物をしているのなら、卑怯者になってしまう。